本コーナーは、欧州航空宇宙防衛工業会(ASD:Aerospace and Defence Industries Association of Europe)と米国航空宇宙工業会(AIA:Aerospace Industries Association of America)が共同で開発した統合プロダクトサポート(IPS:Integrated Product Support)と、一連のデータ交換規格であるSシリーズ国際規格の基本的内容を紹介する目的で作成しました。
第1部は、ILSからIPSに至る歴史的背景や目的を説明(SX000iのChapter 2)
第2部は、IPSの扱う製品(プロダクト)、目標、プロセス、要素などの定義を説明し、実施にあたっての概略を説明(SX000iのChapter 4)
第3部は、S3000Lを基にロジスティクスサポート分析ツールを紹介(S3000L)
第4部は、各Sシリーズ規格の概要を紹介(SX000iのChapter 3)
第5部で、関連用語の説明をします(SX000i)
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Sシリーズとはプロダクトサポート活動分野間のデータインタフェースの標準規格を定めたものです。以下の分野毎に規格が作成されています。
| SX000i | 統合プロダクトサポートのための国際規格(全般) |
| S1000D | 共通ソースデータベースを活用した技術刊行物のための国際規格 |
| S2000M | 部材管理のための国際規格 |
| S3000L | ロジスティクスサポート分析(LSA)国際手順規格 |
| S4000P | 予防整備の開発及び継続的改善の国際規格 |
| S5000F | インサービスデータフィードバックの国際規格 |
| S6000T | 訓練分析と設計のための国際規格 |
ILS/IPSは、プロダクトサポート活動がタイムリーで費用対効果の高い方法で、計画、調達、実施、試験、提供される管理および技術プロセスです。
Sシリーズ国際規格は、全てのプロジェクト関係者が共通の後方活動プロセスを適用し、プロダクトとサービスのライフサイクルを通じてセキュアで効率的にデータを共有、交換できるようにすることを目的としています。
SシリーズはMIL-STD-1388に始まるILS/LSAの正統な流れを汲み、最新のXMLによる記法や考え方を取り込んだものとなっています。また、データ交換の標準規格に重きを置いているため、IPSプロセスについてはまだ記載が不十分であると言われています。プロセスの規格はSAE TA-STD-0017を併せて参照ください。
訳注:本コーナーは、英国国防省(UK MoD Defence Equipment & Support)の「Introduction to the ASD ILS Standards Suite」を参考に、SX000i「統合プロダクトサポート(IPS)のための国際規格」およびS3000L「ロジスティクスサポート分析(LSA)国際手順規格」をベースとして作成しています。なお、本コーナーはSシリーズ各規格のIssue 2をベースに一部Issue 3を取り入れる形で書いています。2025年現在では、各規格とも改訂が進んでおり、本コーナーの記述と異なることもありますので、ご了承ください。
また、本コーナーでは、翻訳を主体としていますが、適切な訳語を決め切れていない部分がありますが、最近出版した「ILSハンドブック(ジェームズ・ジョーンズ著)エディション4」の訳に沿うようにしました。皆様のご意見・ご指導など、お寄せいただければ幸いです。
なお、本コーナーの内容を書籍(紙および電子)でご覧になりたい方は、以下のサイトからAmazonでご購入ください。
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ILSからIPSへの背景
A.本コーナーについて
本コーナーでは、統合プロダクトサポート(IPS)(これまでの、統合プロダクトサポート(ILS))の原則と概念、およびASD規格群/Sシリーズを介したIPSの適用について紹介します。また、IPSのメリットを実現するために行うタスクや責任について理解することを目的としています。このサイズの冊子では、全ての答えを提供することは望めませんが、どこに答えがあるのかを示すものとなります。
本コーナーは、SX000i1の主にChapter 2,4に書かれているIPSの概略および、S3000Lのロジスティクスサポート分析を説明する構成となっています。
なお、Sシリーズでは従来のILS(Integrated Logistics Support:統合プロダクトサポート)を2020年よりIPS(Integrated Product Support:統合プロダクトサポート)という呼称に変更しました。本コーナーの内容はSX000iに則ったものであり、現在の「IPS」を説明していますが、最初に、ILSの歴史を振り返ります。
B.LSA/LSAR(MIL-STD-1388)
LSA分析とデータ標準化の始まりは、1970年代に遡る米軍のMIL規格に始まります。MIL-STD-1388-1A「ロジスティクスサポート分析(Logistic Support Analysis)」及び、MIL-STD-1388-2B「ロジスティクスサポート分析の記録要件(LSAR:DOD Requirements for a Logistics Support Analysis Record)」の規定です。DoD関係者はこのような内容の運用データを採取し、装備品メーカから入手することにより、当該装備品のライフサイクルに関する種々の分析・検討が出来るようにしました。

LSAとLSAR要件は、米国国防総省(DoD)DoD Directive 5000.2「主なシステム取得手順」、およびDoD Directive 5000.39「システムと機器の統合ロジスティクスサポートの取得と管理」によって適用を義務付けられ、統一的なアプローチとなりました。調達・開発段階において、必要な運用上のサポート、その他の体系的なアプローチを通じて、軍事装備システムのサポータビリティを向上させることを統合プロダクトサポート(ILS)の目的としました。
1986年、米軍は紙を多用するLSARを「コンピュータによるプロダクトサポート」(CALS:Computer aided Acquisition and Logistic Support)として知られるデスクトップアプリケーションに変換し始めました。海軍も1987年に同様の努力を始めました。
1991年には、プログラムは統合CALS(JCALS:Joint Continuous Acquisition and Life-cycle Support)の名の下に全てのサービスと統合され、拡大されました。JCALSは1998年8月に使用が承認されています。
MIL-STD-1388-1A(LSA)は、1991年と1993年に更新されています。MIL-STD-1388-2A/B(LSAR)は1984年 7月20日に設定され、1991年に更新されましたが、1996年11月26日には「標準」指定から「ベストプラクティス」にダウングレードされ、1996年にはスタンダードからキャンセル(廃止)されてしまいます。

C.TA-STD-0017A Product Support Analysis (PSA)
その後、10年ほど空白の期間が続いた後、キャンセルされたMIL-STD-1388-1Aのプロセス説明(LSAの部分)については、米国民間規格であるSAE internationalのTA-STD-0017A Product Support Analysis (PSA)として見直され、現在に至っています。また、米国国防総省からは調達ガイダンスとしてMIL-HDBK-502A(Product Support Analysis)のハンドブックも提供されました。
このTA-STD-0017Aでは、プロダクトのライフサイクルにおけるプロダクトサポート分析(PSA)プロセスの実施に適用される一般的な要求事項及び活動内容を規定しています。本規格は、プロダクトのライフサイクルの全段階を通じて、全てのシステム調達プログラム、主要な改修プログラム、及び該当する研究開発プロジェクトに適用されます。
また、2006年にはMIL-STD-1388-2B(LSAR)の拡張版としてGEIA-STD-0007が統合データ環境規格として開発されています。同様にSAEが管理し、これらの規格は現在も米国国防総省と産業界において使用されています。
D.欧州の規格・標準化
その後の航空機等国際共同開発の動静や必要性により、規格・標準化の検討は欧州が盛んになります。
欧州では、戦闘機等の国際共同開発が行われるなどLSA(Logistics Support Analysis)分野で標準化検討が継続/拡大し、英国国防省のDEF STAN 00-60規格として取り上げられ、改良されています。
現在、データ国際規格は、最も体系的/組織的にASD/AIAのSシリーズとして、デジタル設計時代の新国際規格として民間主導で集大成されつつあります。
| SX000i | 統合プロダクトサポートのための国際規格 |
| S1000D | 共通ソースデータベースを活用した技術刊行物のための国際規格 |
| S2000M | 部材管理のための国際規格 |
| S3000L | ロジスティクスサポート分析(LSA)国際手順規格 |
| S4000P | 予防整備の開発及び継続的改善の国際規格 |
| S5000F | インサービスデータフィードバックの国際規格 |
| S6000T | 訓練分析と設計のための国際規格 |

最新のデジタルエンジニアリングにおいて、Sシリーズの適用は「設計」段階から始まります。
Sシリーズは「Design For Support(プロダクトサポートのための設計)」のステージはカバーしませんが、「Design The Support(プロダクトサポートを設計)」ステージから適用します。

また、Sシリーズでは、設計凍結前に必要なプロダクトサポート分析(PSA)はカバーしていないことに注意が必要です。そして、Sシリーズはデータベースではありません。これらの規程は、主としてTA STD 0017Aに書かれているため、Sシリーズ適用時にはあわせて参照する必要があります。
Sシリーズは、データ交換の規格(フォーマット)を定義しますが、ソリューションではありません。ロジスティクスプロダクトデータリポジトリの作成など、他の技術やツール、ソフトウェア等が必要です。

| TA 0017A ← MILSTD 1388-1A DEFSTAN 00-60 | Sシリーズ, GEIA 0007A | ← | MIL-STD 1388-2B, DEFSTAN 00-600 | |
| IPSプロセスのガイダンス | IPSプロダクト/データ交換の規格 | |||
<デジタルエンジニアリングとIPS&Sシリーズ>
